9. カルト問題
資料確定:2025-12-02 02:12
9.0. 今回参照した主な文献・項目
9.1. カルトとは何か
"cult" の語義(『ランダムハウス英和大辞典』)
1 (ある特定の)祭儀、礼拝形式。
2 (特にある集団の人たちが表明する、ある人・理想・事物への)礼賛、崇拝;(一時的)熱狂、流行、…熱((of ...))
3 (2のような)崇拝[礼賛,熱中]の対象。
4 ((集合的)) (同じ物・人・理想などに対する)礼賛者の集団.
5 〔社会〕 カルト:ある崇拝の対象を取り巻く、組織化された信仰と儀礼を持った集団;新興の宗教運動に対して用いることが多い。
6 邪教,異教;((集合的)) 邪[異]教徒。
7 (教祖的人物に由来するとされる)非科学的な治療法、祈祷療法。
文化人類学における「カルト」の用法
「何らかの崇拝対象を取り巻く信仰と儀礼のセット」(三木「カルト」)
例:カーゴ・カルト:「19世紀の末以降、西洋諸国の植民地支配下にあったメラネシアの各地で発生した、社会・文化が急進的、超自然的に変化するという信仰に基づく千年王国的な宗教運動。」(中山和芳「カーゴカルト」『世界民族問題事典』)
宗教学・宗教社会学などの文脈では
チャーチ・セクト・デノミネーション
チャーチ/セクト(三木「チャーチ・セクト論」)
第3の類型としてミスティシズムを加える:チャーチ/セクト/ミスティシズム
チャーチ:「恩寵の独占機関」
社会の支配層に結びついている。
ヒエラルヒー構造をもつ。
世俗を肯定して全体社会を包括しようとする。
信仰は個々の選択ではなく、チャーチへの加入は生まれ落ちた時点で決められている。
典型:最盛期のカトリック教会
セクト:
社会の下層や社会への不満分子と関係をもつ。
自発的結社:宗教的・倫理的に資格を有すると認められた者だけが自らの意思で自発的に参加する。
平等主義的結社:万人祭司主義を原則とする。
メンバー間の人格的・直接的交わりを重んじる。
世俗社会に対して無関心、もしくは敵対的な態度を示す。
チャーチに対して、規模は小さい。
具体例:プロテスタント諸派
デノミネーション(住家「デノミネーション」)
デノミネーション(ニーバーの使い方=現代の学術的用法)
「伝統的な宗教組織とは切り離されたところで生じた急進的なセクトが、社会的に高い地位を獲得するにつれ、宗教性の表現が穏当で社会的に受け入れられやすいものになった状態」。
「カルト」という概念:チャーチ・セクト・デノミネーションでとらえれらない類型として
カルト:
チャーチをecclesia(教会)/デノミネーションに、セクトをセクト/カルトに。
「カルト」類型:「個人的な忘我や癒やしの体験を強調する純粋に個人的な宗教形態」(西山「宗教類型」)。
既存の宗教伝統から逸脱する教えをもつ(三木「カルト」)。
それゆえに、周辺社会から不審視される(同上)。
「カルト」という宗教集団の類型についての学問的批判
「カルト」と「セクト」の区別が曖昧である。
カルトが〈個人主義的に宗教的ニーズの充足を求める人びとによるゆるやかな結合である〉として、そうした存在を宗教組織と認識してよいのかどうか。
「信仰の再確立を目指して母教団から分離するセクトとは異なる、 既存伝統から逸脱的な新しい教えのもとに形成された集団」
カルトに3つの下位分類を考える:組織化の達成度に注目
オーディエンスカルト:組織化レベルが最も低い。
クライエントカルト:中間
カルト運動:組織化レベルが最も高い
新奇な神秘的なものについての情報をメディアを通じて知り、関心を寄せる人びとをそのメンバーとする。
彼らは宗教的な情報の消費者であり、それによってスリルやエンターテインメントを得ようとする。
しかし、消費者同士で、また情報提供者とより深くつながろうとする意欲には乏しく、さらに情報提供者側もオーディエンスを組織化しようという意図に乏しい。
神秘主義的なテーマを扱う講演会、書籍・雑誌、あるいはテレビ番組が開催され発売され放映されて、人びとが集まり読者や視聴者が現れる時、 そこにオーディエンスカルトは成立している。 近年では、ウェブサイト上にも成立している。
宗教教団と社会の軋轢
カルト/マインド・コントロール論争
「一時的あるいは永続的に,個人の精神過程や行動を操作あるいは支配すること」
「組織がその目的の成就のために、新メンバーの獲得や維持といった人的管理のために用いられるが、広義にはプロパガンダや詐欺的商法など個人の意思決定を欺瞞的に誘導する体系的操作を指す。」
「歴史的にはマインド・コントロールは、監禁、拷問や薬物を用いながら個人の意思や行動を支配しようとした洗脳 brainwashingから発展し、その身体的な強制の代わりに、隠ぺいや欺瞞による情報操作を用いて,個人の意思決定過程における自発性を仕組む。」
「さらに強力な操作法では,個人のアイデンティティの根幹にかかわるビリーフ・システムbelief system(信念体系)の変容…(略)…を導くことで実現する。」
マインド・コントロールか、自発的入信か(櫻井義秀「カルト問題」)
マインド・コントロールでは、「特定集団によって情報・感情・行動・環境が支配され、認知的不協和の状態が意図的に作り出されることによって、徐々に個人の人格や態度が変容させられる…」
双方の主張
カルト批判者の主張:マインド・コントロールを解き、精神の自由と侵害された人権や財産権を回復する…
教団側の主張:信者は自発的に入信している…
現実の入信・回心、教化のプロセスでは、信者側の志向性と教団側の働きかけが必ずあり、マインド・コントロールと信者の自由意志のどちらかだけによるという状況にはない。
裁判などで問題になるケースでは、元信者が、教団側に正体を隠すなどの詐欺があったり、不安を煽るなど強迫的要素があったと主張し、完全な自発性や自由意志によるものではないことをいうことが多い。
このプロセスの理解や説明のために、マインド・コントロール論が活用される。
脱会カウンセリング(櫻井「脱会カウンセリング」)
「カルト」信者を家族が説得して脱会させる際に、カルト問題の専門家がカウンセラーとして脱会を支援する方法。
目的は、信者のマインド・コントロールを解くことである。
その行為の正当性をめぐって議論がある。
信者の信仰生活に対して、家族とカウンセラーがどこまで介入していいのか。
信者の人権(特に、信教の自由)に対する問題はないのか。
カルト問題で問い直される公共的な課題(櫻井)
精神の自由や人権をどう考えるのか
宗教的理念と社会秩序の関係をどう調整するのか など。
法理では、個人の自律性が前提になっている。
9.3. 「カルト」などとして問題視されたことがある例
→別資料(K-SMAPY「授業資料」参照):授業時に画面投影
9.4. 参考文献